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長引く不況が影を落とし続けるなか、10年春夏ニューヨーク・コレクションが開催された。ファストファッション全盛、ウエアラブルな現実路線は加速の一途をたどる。その一方、沈滞ムードにはもう食傷気味とばかり創造性を弾けさせ、意匠を凝らしたデザインへと回帰する「変化の兆し」を予感させるシーズンともなった。 【フォトギャラリー】10年春夏NYコレクションを写真で コレクション期間中も話題といえば、ファストファッションと著名デザイナーとのコラボレーション。パリやミラノをしのぐ200近いブランドがショーや展示会を開くが、多くは徹底したマーケティングに基づく万人向けリアルクローズで、商業主義も極まれりの感がある。 だが今回、そんな現実ムードを覆すかのように、再び創造性で勝負しようとするデザイナーの意気込みが感じられたのは、最大の収穫だった。鮮烈な色彩、豪華な素材、過剰なまでの装飾性など、いま一度「夢」を、と希求する社会の反映なのかもしれない。 オバマ大統領夫人が舞踏会で着用して一躍スターダムに上がったジェイソン・ウー。上質で格のあるツイード素材のスーツや、チュールを花びらのように仕立てたドレスなどで、ネオコンサバを表現した。デビューからわずか3年ほど。超高級ホテルのサロンを会場に、床には鏡を敷き詰めた。フェザーを全面にあしらった豪華な1枚には、顧客からため息がもれた。 コレクション関連イベントの公式Tシャツのデザインから、GAPとのコラボレーションまで、多様な活動で注目度が高まるアレキサンダー・ワン。今季は「アメリカ的なるもの」がテーマで、アメリカンフットボールなどのスポーツやミリタリーのテーストをちりばめ、キャンパスを闊歩(かっぽ)する活発なグッドガールをイメージした。「トレンドが強調され過ぎる今だからこそ、古き良き時代の伝統を採り入れたかった」とワン。 NYを席巻するアジア系デザイナーのもう1人はタクーン。「海中の自然をイメージした」という優しい色合いのプリントの数々は、懐かしい雰囲気が漂う。フォルムはドレープを多用して有機的な穏やかさを醸したり、中世騎士の甲冑(かっちゅう)をヒントにボリューム感を演出したりとバリエーションも付けた。 ザック・ポーゼンの色使いも、目に焼き付いた。軽快でエネルギッシュなラテン風の味付けながら、品の良さも忘れていない。ポーゼンは「フラワーペインターの友人から色のアイデアをもらった。テーマはズバリ、情熱と愛」と語る。 ロダルテはアフリカンを前面に出した。腕にタトゥー風の装飾を施し、しわ加工したエスニック風の生地をねじってショール風に体中に巻き付ける。黒砂を敷き詰めた床にはスモークもたかれ、ミステリアスな雰囲気を演出した。 デビュー2年目ながら、大人のエレガントさで人気上昇中のアルトザラ。ジバンシィなどで磨いた技術を生かし、ディテールに可愛らしさがのぞく「凝っているのにウエアラブル」なピースが光る。 ベテラン勢でテーマ性を強く感じさせたのは、ダイアン・フォン・ファステンバーグ。古代の砂漠に浮かぶオアシスが舞台で、髪には蝶(ちょう)のヘアアクセサリー、得意のプリントには不死鳥やナイルに沈む夕日をデザインした。「1月に旅したエジプトで体験した、太古からある自然の魅惑的な美しさを表現したかった」とファステンバーグ。 マーク・ジェイコブスは造形美を見せつけた。おびただしいほどのフリルにレース、レイヤード。トゥーマッチを突き詰める様は、デザインとは、フェミニンとは――と挑戦しているかのよう。バレリーナの髪形に歌舞伎を連想させる白い顔、メタリックやビニールのファブリックといった異分野のコンビネーションが、ひとつの新たなジャンルを作り出していた。 女優の多くが、次にレッドカーペットで着たいドレスに挙げるというマルケッサ。オペラ「蝶々夫人」からヒントを得て、職人技が光る刺繍(ししゅう)、折り紙を連想させる立体的なリボンなど、オートクチュール仕立ての意匠を凝らした。 常に旬のスターを求め続けるNYのファッション業界。「次は誰か」。不況の時こそ新しい才能が芽吹くとばかり、各会場は先物買いを狙う異様な熱さに満ちていた。 (文・柏木友紀写真はすべて大原広和氏撮影)